ここでは割増賃金が発生する残業手当(時間外手当)、休日手当、深夜手当について説明していきます。
一般的に割増賃金が発生するのは、以下の3つです。
・時間外手当(1日8時間以上勤務)
・休日手当(法定休日出勤)
・深夜手当(22時~5時まで勤務)
それぞれの計算式は以下の通り。
1.25倍以上の割増賃金になります。
それでは一つずつ説明していきます。
■目次
時間外手当
一番代表的なものが時間外手当(残業と呼ばれているもの)です。
一般的に残業というのは、1日8時間または週40時間を超える場合を言います。
それを超えた場合に割増賃金(残業)が発生します。
この1日8時間、週40時間というは法律で定められた労働時間の上限です。
例えば1日8時間勤務で2時間残業したとします。
その場合は以下の(例1)のように2時間が残業となり、割増賃金が発生します。
時間外の支払い(例1)
・時給1000円
・通常9時~18時勤務
・2時間残業した場合
この場合、残業分は1.25倍になるため以下の計算方法になります。
8時間を超えた2時間が1.25倍の割増賃金です。
時間外の支払い(例2)
では1日7時間30分勤務の場合はどうなるのでしょうか?
この場合は、通常8時間までの30分間は割増賃金は発生しません。
8時間を超えた場合が割増となるからです。
・時給1000円
・通常9時~17時30分勤務
・2時間残業した場合
1日8時間になるまでは割増はつかず、その後は割増賃金となります。
残業2時間のうち、8時間を超える1時間30分が割増賃金の対象です。
休日出勤手当
これは自分の公休日(土日が休みの場合は土日が該当)に出勤して働いた場合です。
休日出勤の場合は、1時間あたり通常賃金の1.35倍(法定休日の場合のみ)になります。
細かい話をすれば、休日には「法定休日」と「法定外休日」があります。
法定休日というのは法律で決められている休日で「毎週1日もしくは4週間に4日の休みを与えなければなりません。」これ以下の休みで働かせていた場合には違法となります。
この休みのことを「法定休日」と言います。
では週1日休みがあれば良いのかというと、そういうことではありません。
前述したように労働基準法第32条では、労働時間の上限を1日8時間、週40時間と定めています。
労働者が1日8時間働いた場合、5日働けば週40時間となり、これ以上働かせることはできません。
その場合は休日を法定休日以外に1日設ける必要が出てきます。
このように法定休日以外に設ける休日のことを「法定外休日(所定休日)」といいます。
いつが「法定休日」でいつが「法定外休日」なのかを就業規則等で確認しておきましょう。
法定休日に働いた場合は1.35倍以上の割増賃金となりますが、法定外休日に働いただけでは割増賃金にはなりません。
週40時間を超えた分については1.25倍の割増賃金が発生します。
休日出勤の例1
(例)1日8時間労働、週5日勤務で、法定休日に8時間残業した場合
1日8時間で週5日勤務の場合は、既に週40時間。
法定休日分8時間は法定休日分の割増賃金(1.35倍)になります。
休日出勤の例2
法定外休日に仕事をした場合を例にします。
(例)1日7時間労働、週5日勤務で、法定外休日に5時間残業した場合
※平日2時間の残業あり(火曜・木曜)だが、8時間を超えるのは1時間のみ
※日曜は法定休日で休み。
1日7時間で5日勤務だと週35時間。
平日2時間の残業を2日行っているが、8時間を超えるのは1時間のみ。
法内残業は割増にならない。
土曜については、週40時間を超える2時間のみが割増賃金(1.25倍以上)となる。
オレンジ部分(法内残業)は割増にはならない。
法定休日が決まっていない場合はどうなるのか
休日には「法定休日」と「法定外休日」がありますが、就業規則等に具体的に記載のない会社もあります。規定していなくても違法というわけではありません。
ではその場合、どちらが法定休日になるのでしょうか。
例えば、
・月~金まで働いて土曜に出社した場合
・月~金まで働いて日曜に出社した場合
この場合は「日曜から土曜を1週間」と考えれば、それぞれ日曜日、土曜日と週1回は休んでいます。
その休んでいる方が「法定休日」となり、実際に出社した日は「法定外休日」となります。
そのため休みの日に出社しても法定休日の割増対象(1.35倍以上)とはなりません。
法定休日の割増にはなりませんが、当然1週間で40時間以上働いた分については時間外労働の割増賃金(1.25倍以上)にはなります。
深夜労働手当
深夜労働手当とは午後10時~午前5時までの時間に働いた場合に割増になるものです。
深夜手当は1時間あたり通常賃金の1.25倍以上支払わなければなりません。
コンビニのアルバイトなど深夜勤務の方が時給が高いのはこのためです。
では、時間外労働と深夜労働が重なった場合はどのようになるのでしょうか?
時間外労働と深夜労働が重なった場合
(例)通常9時~18時までの勤務で深夜0時まで残業した場合
・ 9時~18時までは通常賃金。
・18時~22時までが時間外手当となり1.25倍以上
・22時~0時までが1.5倍以上(時間外手当1.25+深夜手当1.25倍)
そのほかの割増手当
月に60時間を超える時間外労働の場合
平成22年の労働基準法改正により「1ヶ月あたり60時間を超える時間外労働に対しては1.5倍(50%)の割増賃金を支払うこと」になりました。
中小企業は猶予期間となっていましたが、31年4月より終了となります。
過度の残業は労働者の健康を損ないます。そうさせないために法律で割増賃金を高く設定しています。
60時間を超えて残業した場合は1.5倍になるため、深夜に仕事をする場合は1.75倍以上支払う必要があります。
さいごに
割増賃金については、1日8時間、週40時間を超えた場合に発生することを覚えておきましょう。
・時間外手当は1.25倍
・休日手当は1.35倍
・深夜手当は1.25倍
・時間外手当+深夜手当は1.5倍(1.25+1.25)
・休日手当+深夜手当は1.6倍(1.35+1.25)
組み合わせによってそれぞれ割増賃金額も変わってきます。
ちなみに一般的な労働者の1日平均の勤務時間はどれくらいでしょうか?
(平成28年調査厚生労働省)
・1日の所定労働時間:7時間43分
・1週の所定労働時間:39時間01分
これは企業規模や業界の違いもほとんどありません。横一列という感じ。
どれも1日8時間、週40時間という法律上の労働時間の上限にはギリギリおさまっていますね。