税金

所得税の計算(誰でもわかる図解で解説)

2017年12月1日

所得税について誰でもわかるように図と例を用いて解説していきます。

一体あなたはどれだけの税金を国に支払っているのでしょうか。
さまざまな形で国に税金を納めており、所得税も税金のひとつです。

所得税とは、給与などの収入の額に対して一定の割合で税金がかかるもの。
収入が多ければ多いほど多くの所得税がかかります。

収入から引かれる税金(所得税・住民税)

一般のサラリーマンの場合は、所得税は自分で申告する必要がありません。
勤務先が計算し、所得税額を給料から差し引かれ、勤務先を通してお住いの市区町村や税務署に税金を納めることになっています。

この仕組みのことを「源泉徴収制度」といいます。

所得税の計算方法を知らなくても生活に不便はないかもしれません。
しかしどのような仕組みで税額が決められているのかを知っていることはとても大切なこと。

仕組みを知らないことで無駄に税金を支払うこともあるかもしれません。

基本的な流れは下の図の通りです。
課税所得金額の算出(必要経費と所得控除を差し引く)円グラフ
課税所得金額の算出(必要経費と所得控除を差し引く)表
・収入金額-必要経費=所得金額
・所得金額-所得控除=課税所得金額

所得税の仕組みを理解するには、上記内容について覚えることが大切です。

 

所得金額の算出方法<ステップ1>

所得といってもさまざまな所得の種類があります。所得金額は、次の10種類に区分して計算します。

種類 内容
①利子所得 預貯金・国債などの利子の所得
②配当所得 株式や出資の配当などの所得
③不動産所得 土地や建物を貸している場合の所得
④事業所得 商工業・農業などの事業をしている場合の所得
⑤給与所得 給与・賃金・ボーナスなどの所得
⑥退職所得 退職金などの所得
⑦山林所得 山林の立木を売った場合の所得
⑧譲渡所得 土地や建物、株式やゴルフ会員権などを売った場合
⑨一時所得 生命保険の満期一時金・立退料など一時的な所得
⑩雑所得 公的年金・生命保険契約等に基づく年金など①~⑨以外の所得

サラリーマンなら⑤の給与所得に該当します。これが収入金額です。
そこから必要経費を差し引いた額が所得金額

さらに所得金額から所得控除を引いた額が課税所得金額になります。

実際の所得税の計算はこの課税所得金額により決定します。

では、収入から差し引くことができる必要経費とはどのようなものがあるのでしょうか。

必要経費について

収入から差し引くことができるのが必要経費です。
ここではサラリーマンの場合と個人事業主の場合を見ていきます。

サラリーマンの給与所得控除額

自営業の場合は広告宣伝費、修繕費、減価償却費、接待交際費、地代家賃などを計上することになりますが、サラリーマンにはありません。

その代わりとしてサラリーマンには給与所得控除があります。
給与所得控除は収入から一定額を必要経費として認めましょうという制度です。

◆給与所得控除表

給与等の収入金額 給与所得控除額
180万円以下の場合 収入金額×40% (※1)
180万円を超え360万円以下の場合 収入金額×30%+18万円
360万円を超え660万円以下の場合 収入金額×20%+54万円
660万円を超え1000万円以下の場合 収入金額×10%+120万円
1000万円を超え1500万円以下の場合 収入金額×5%+170万円
1500万円を超える場合 245万円(上限)

※1. 65万円に満たない場合は65万円になる。

(例)年間給与総額が500万円の場合

給与総額が年間500万円の場合は、「360万円を超え660万円以下の場合」に該当します。
計算式は「収入金額×20%+54万円」。

そこに当てはめると、500万円×20%+54万円=154万円。
この154万円がサラリーマンとして必要経費に認められることになります。

500万円から154万円を引くと、346万円が所得金額です。

個人事業主の場合の必要経費

個人事業主の必要経費は「仕事をする上で必要は費用」です。

  • 仕事に必要な機器(パソコン、周辺機器、ソフト)
  • 文房具、コピー用紙、その他消耗品
  • 家賃、光熱費、通信費などの事務所経費
  • 広告宣伝費
  • 営業、打ち合わせなどの交通費
  • 接待交際費、会議

必要経費になるものならないものは細かく分かれています。
個人の状況や環境によっても変わってきます。

ステップ1では、「所得金額」の算出方法を書いてきました。
次に大事なものが「課税所得金額」です。

実際の所得税はこの課税所得金額により決定されます。

課税所得金額の算出方法<ステップ2>

収入金額から必要経費を引いた額が所得金額でした。
その所得金額からさらに所得控除を引いたものが課税所得金額です。

ではその所得控除にはどのようなものがあるのでしょうか。

所得控除の一覧

種類 控除を受けられる場合 控除額
基礎控除 すべての納税者が一律に受けられる 38万円
社会保険料控除 健康保険料、年金保険料などの社会保険料をし支払った 支払った社会保険料
医療費控除 一定額以上の多額の医療費を支払った 医療費控除額-保険などで補填される額-(10万円または所得の5%)【上限200万円】
生命保険料控除 生命保険などの生命保険料を支払った 生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料それぞれ最高4万円、合計最高12万円
地震保険料控除 地震保険料を支払った 最高5万円
配偶者控除 配偶者の合計所得金額が38万円以下(給与所得者の場合年収103万円以下) 38万円(配偶者が70歳以上は48万円)
配偶者特別控除 配偶者の合計所得金額が38万円を超え76万円未満(給与所得者の場合年収103万円超141万円未満) 最高38万円
扶養控除 納税者に扶養されている一定の要件(合計所得金額38万円以下など)の親族がいる 38万円(特定扶養親族は63万円、老人扶養親族は48万円または58万円)
障害者控除 納税者本人や配偶者、扶養親族などが障害者である 27万円(特別障害者は40万円、同居特別障害者は75万円)
寡婦・寡婦控除 寡婦または寡夫である 27万円(特定の寡婦は35万円)
小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済等掛金、確定拠出年金(企業型・個人型)の掛金を支払った 支払った掛金

サラリーマンの所得控除(例)

実際にサラリーマンの場合、具体的にどのような所得控除が受けられるのでしょうか。

まずは「基礎控除」の38万円。
この基礎控除はすべての納税者が控除を受けられます。

次に社会保険料控除。サラリーマンなら給料から毎月天引きされているもの。
社会保険料には、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料が含まれます。
支払った全ての金額が控除対象です。

次に専業主婦とふたりの子供を扶養していた場合はどうでしょう。
その場合は配偶者控除と扶養控除で38万円×3=114万円の控除が受けられます。

所得税の計算方法<ステップ3>

総収入に必要経費と所得控除を引いたものが「課税所得金額」です。
この課税所得金額を元に所得税の計算をおこないます。

下の表を元に計算していきます。
【所得税の試算表】

課税所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超~330万円以下 10% 9万7500円
330万円超~695万円以下 20% 42万7500円
695万円超~900万円以下 23% 63万6000円
900万円超~1800万円以下 33% 153万円6000円
1800万円超え 40% 279万6000円

※1000円未満は切り捨て

さらにここで「特別復興所得税」として2.1%が加算されます。
特別復興所得税は東日本大震災からの復興のために平成23年12月に創設された税金です。
個人の場合は、平成25年(2013年)1月から平成49年(2049年)まで支払う必要があります。

特別復興所得税が2.1%加算される

では実際にサラリーマンの所得税の計算をしてみましょう。

サラリーマンの所得税の計算(例)

サラリーマンの所得税の計算例

図の内容で具体的に計算していきます。
先ず流れを説明していきます。

1.所得金額の計算
2.課税所得金額の計算
3.所得税の計算

収入から所得税額までの流れ

所得金額の計算

所得金額の算出方法は、「収入金額-必要経費」です。
サラリーマンの場合の必要経費は「給与所得控除額」になるので給与所得控除表から450万円のところを見ます。

450万円の場合、「360万円を超え660万円以下の場合」になるため、控除額は「収入金額×20%+54万円」です。
計算すると144万円になります。

450万円からこの額を引くと所得金額が算出されます。
450-144=306万円

所得金額は306万円になります。

課税所得金額の計算

次に計算するのが「課税所得金額」です。
課税所得金額は所得金額から所得控除を引いた額。

所得控除にはさまざまな控除の種類があります。

例の場合は、以下4つの控除が該当します。

・基礎控除(本人)
・配偶者控除(妻)
・扶養控除(子供)
・社会保険控除

それぞれ、
・基礎控除:38万円
・配偶者控除:38万円
・扶養控除:38万円
・社会保険料控除:60万円

合計すると、174万円です。

先程の所得金額から174万円を差し引きます。
306万円-174万円=132万円。

課税所得金額は132万円になります。

※控除するものが多ければ多いほど、課税所得金額は少なくなります。

所得税の計算

では最後に所得税の計算です。
課税所得金額が132万円と算出されました。

では先程の【所得税の試算表】で該当する箇所を見ていきます。
132万円の場合は、195万円以下に該当するので税率は5%(控除額0円)。

132万円×5%=66,000円。
そこから特別復興所得税2.1%を加算します。

66,000円×102.1%=67,386円
100円未満は切り捨てますので、67,300円

所得税額(納税額)は67,300円になります。

まとめ

所得税の仕組みや計算方法などをまとめてみました。
サラリーマンの方はどのような仕組みで所得税が計算されているのか知らない方も多いかもしれません。

確定申告を個人でおこなう場合はある程度わかる内容ではないでしょうか。

収入が増えれば所得税も住民税も増加します。
必要経費や必要な控除が増えれば税金は少なくて済みます。

どのようなものが必要経費になるのか、控除対象になるのか。
日頃から意識していれば無駄な税金を減らすことができるかもしれません。

 

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